一欅庵(いっきょあん)和の暮らし展

御伽草子 『団子浄土』

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今年の「一欅庵和の暮らし展」では、〜御伽草子の玉手箱〜と題して、色んな土地に埋もれている素敵な御伽草子を取り上げて、そこから、季節の楽しみを表現しています。
今回も春に引き続き「日本伝承民族童話全集」から新潟のお話をピックアップしました。
ちょうど、秋から冬にぴったりだと感じたお話。
ほのぼのとしつつ、奥深い世界観が詰め込まれていると感じる内容です。
言葉遣いもなんだか和む文章。

どうぞお楽しみ下さい。
今回は、こちらのお話の朗読会も開催です。

「団子浄土」

むかし、むかし、きょうも、おじいさんは、いつものとおり、山へ柴刈に出かけます。

「では、おばあさん、いってきますぞ。」
「はい、おじいさん、今日は、地蔵さまの縁日で、よいお日和ですから、おそなえの団子をつくったら、山へもってってあげますぞ。」
「そうかいな。」

山でおじいさんが、昼やすみしているところへ、おばあさんは、大きな団子を三つ持って、山をのぼってきました。
みると、おじいさんのいる山は、その山ではなくて、谷のむこうの山で、いっぷくしておりますので、おばあさんは、

「おじいさァ、団子もってきたけどなァ、谷が渡られないが、団子どうしよう。」

と、大ごえで、ききました。
すると、おじいさんは、立ちあがって、

「団子投げれえ。」

といいました。
それで、おばあさんが、

「そら、投げるでえ。」

と、いって大きな団子を、グーンと一つ投げました。
でも、その団子は、おじいさんのところまで、とどかないで、山のへりを、ころころころ、ポトーンと、そこん穴ン中へ、おちこんでしまいました。
おじいさんは、それを見て、

「もっと力出して投げれえ。」

といいました。
それで、おばあさんは、力ァだして、二つ目の団子を、

「そら投げるでえ。」

と、グ、グーンとひょうしをつけて投げましたが、まだ、おじいさんのところまでとどかないで、ころころころころ、山のへりをころんで、ポトーンと、これも、穴ン中へ、おちこんでしまいました。
おじいさんは、手をあげて、

「おばあさんやァ、もう一息だ、うんと力ァだして、むだンせんよう、投げれえ。」

と、ちゅういしました。
すると、おばあさんも、手をあげて、それにこたえ、

「もう、これきれだでえ、ほうれ。」

と、こんどこそ力いっぱい、グ、グ、グ、グーンと投げたれば、しまいの団子は、やっと、谷を越して、おじいさんのそばの木の株に、引っかかりました。

おじいさんは、まだ、やわらかいその団子を、むしゃむしゃたべましたが、あんまり、うまかったので、かえりがけに、団子のころげ落ちた穴ン中をのそいてみました。

ところが、こんどは、おじいさんが、ズラズラズラズラッとすべって、たちまちポトーンと、中へ落ちこんでしました。
さいわいに、けがもせずに、おっこちた穴ン中を、みわたしますと、そこに、地蔵さまが立っていらしって、

「これ、じじ、おまえ、なにしに来たや。」

と、とがめました。

「はい、ここへ、おばあさんが、ころころ団子を投げおとしたようなので、のぞきこんで、ズラズラすべりおちました。ここへ、団子が落ちてはきませんでしたか、お地蔵さま。」

と、いいますと、

「おお、ころんできたけど、一つは、おれが拾うて食うてしもうた。」

と、お地蔵さんがいわれました。

「では、もう一つは。」

と、おじいさんがききますと、

「一つは、ここん小鬼共がひろうてな、こん夜、黄金の臼に入れ、銀の杵でついてしまうというてたぞ。」

と、お地蔵さまがおしえてくれました。

「では、それえ、かえしてもらわにゃァならん。」

と、おじいさんが、いいますと、

「だら、はようせにゃ間にあわん、まず、おれの膝の上に上れや。」

と、お地蔵さまが、もうされます。

「こりゃァ、もったいない、どうして、お地蔵さまの膝の上に上れましょうば。」
「まあ、いいから、上れ、上れ。」

それで、おじいさんが、お地蔵さまの膝の上に上りますと、お地蔵さまは、

「膝あ上ったら、そこを足場にして、肩の上へ上れ。」

と、お地蔵さまが、もうされます。

「こりゃァ、ずっともったいない、どうして、お地蔵さまの肩の上に上れましょうば。」
「まあ、いいから、上れ、上れ。」

それで、おじいさんが、お地蔵さまの肩の上に上りますと、お地蔵さまは、こんどは、

「肩の上さ上ったら、もう一息、頭の上へ上れ。」

と、お地蔵さまが、もうされました。

「もったい至極もない、どうして、お地蔵さまの頭の上へなんか、上られましょうば。」
「まあ、いいから、上れ、上れ。」

おじいさんが、お地蔵さまの頭の上に上りますと、そこはほんとうに、いい居ごこちのするところで、まるで、極楽浄土にきているような気持です。

「もっていないけど、なんと、ここは、けっこうな居ごこちのよいところで、ござりましょう。」

と、おじいさんがいいますと、

「そこは、みほとけのてっぺんじゃ、おちて小鬼の臼につかれぬがよいぞ。やがて、小鬼どもがやってきたら、折を見て、鶏の鳴くまねをし、団子をとりかえすがよい。」

はなしてるところへ、小鬼どもは、

黄金の臼に
銀の杵
これでつきゃ
団子浄土
  小鬼の世盛り
  チャンカチャンカ チャンカチャンカ。

と、うたいながら、やってきて、とりだした黄金の臼と銀の杵、ていねいにささげた団子をとりだして、チャンカチャンカ、鬼共は、団子を搗きにかかりました。
じぶんはよしと、おじいさんが、

「ケ、ケッコウ、ケ、ケッコウ。」

と、鶏のまねをして、東天紅を鳴きだしましたら、鬼どもは、

「さあ大変。」
「もう夜が明けたそうな。」

と、黄金の臼も、銀の杵も、団子も、なにも、ほっちゃらかして、逃げていってしまいました。
あとで、おじいさんが、団子をとりだしてみたら、団子も黄金にかわっていましたとさ。

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by wa-no-kurashi | 2016-10-31 11:11 | お知らせ | Comments(0)

西荻窪の有形文化財の建物 一欅庵(いっきょあん)にて、春夏秋冬、和の暮らし、手仕事を伝える【一欅庵 和の暮らし展】の公式blogです。
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